東京精密グループは、気候変動がもたらす気温上昇や自然災害の激甚化等により社会経済に及ぼす影響は大きく、当社事業においても大きなリスクと考えています。一方で、気候変動への対応を進めることで、企業の強靭化や製品競争力強化につながるほか、事業の拡大といった機会にもなりえると考えています。
TCFD(気候関連財務情報タスクフォース)対応
当社は、2021年8月にTCFD対応プロジェクトを発足しました。また、2021年11月に代表取締役CEOを委員長とするサステナビリティ委員会を設置し、同委員会の重要活動としてプロジェクトを継続することといたしました。当社では、気候変動が事業に及ぼすリスクと機会を分析し、課題を共有・展開するとともに、TCFDの枠組みに基づいた気候関連財務情報の開示を進めます。
当社は、2022年3月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明しました。

ガバナンス
東京精密グループは、気候変動を経営上の重要課題として認識しており、気候変動問題に関するリスク・機会の管理をサステナビリティ委員会で審議し、その内容を定期的に取締役会に付議・報告します。
サステナビリティ委員会の委員長は代表取締役CEOが務め、年2回定例のサステナビリティ推進会議で報告および委員長が必要と認める場合、取締役会に付議・報告します。
各取締役は、刻々と移りかわる気候変動関連の状況を把握するために、様々な機会や方法を通じて情報収集を行い知見を深めています。
取締役会では気候変動にかかるリスク・機会の課題を共有し、目標管理や課題解決に向けた議論を行います。

【サステナビリティ委員会について】
サステナビリティ活動に関する企画・立案・計画・実施を担い、具体的には以下のような活動を進めます。
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基本方針・運営の枠組み・目標の策定等、情報のモニタリング
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計画とプロジェクトの設置・運営
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整理、取締役会報告等
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各種報告書、情報開示に関する事項
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サステナビリティ推進会議の開催・運営
【TCFD対応プロジェクトについて】
サステナビリティ委員会を中心に組織し、生産、営業及び管理部門の関係者が参加し、気候変動に関する調査・検討を担い、定期的に委員会に報告します。
リスクマネジメント
TCFD対応プロジェクトでは、気候変動に関するリスク(移行/物理)に関して、調査・検討を行っています。本プロジェクトは定期的に、または緊急性に応じてサステナビリティ委員会へ報告します。事業経営に影響すると思われる事案に関しては、速やかに委員会より取締役会に報告され判断されます。
その他の事業リスクを管理するリスク管理委員会とも情報共有し社内全体の対応にあたります。
戦略
現状の分析対象は東京精密国内事業となり、Scope1、Scope2を対象とします。
グループ企業(国内および海外子会社)のGHG 排出量については、今後モニタリングを進めながら順次対応していく予定です。
今後はサプライヤー含めてScope3を調査します。
将来予測は不確実性が高く分析が難しいことから複数のシナリオを参照して検討を行いました 。
2℃未満シナリオの下での対応では不十分との国際的な世論が形成されつつあり、1.5℃ シナリオを視野に入れて分析を行いまし た 。
一方、1.5 ℃シナリオへの対応では、物理的リスクへの意識が希薄化することから、現状の経済活動を継続した場合に気温が上昇する4℃ シナリオでの事業環境を想定しました。
※参照したシナリオ
1.5℃シナリオ:【IEA 】 NZE 、 1.5℃ 特別報告書 【IPCC 】 SSP1-1.9
4℃シナリオ:【IEA 】 STEPS 【IPCC 】 SSP2-4.5 、 SSP3‐7.0
シナリオ | リスク機会 | イベント | 内容 | 財務インパクト | 発現時期 | |
1.5℃ |
リスク
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規制 | カーボンプライシング |
◆炭素税導入による原材料・資機材・エネ
◆国境炭素税の導入により、製品輸出へのルギー・輸送費用等の上昇 制約 |
▲▲▲ | 中期 |
市場
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EV化 | ◆従来の事業・製品(内燃機関関連部品向 け計測器)の需要縮小 |
▲▲ | 中期 | ||
脱炭素化プレミアム | ◆脱炭素化に伴う材料価格の高騰、調達 難、代替品確保に伴うコスト発生 ◆非化石エネルギーの調達難や調達コスト の上昇 |
▲▲ | 中期 | |||
評判 | 脱炭素化対応の遅れ | ◆気候変動対応をはじめとするESG 対応の 遅れは、資金調達や取引関係に悪影響 |
▲ | 中期 | ||
機会 |
市場
|
EV化 電化・デジタル化 |
◆EV の新たな素材・部品への計測需要が拡 大・半導体利用が増加し、生産能力が拡張 |
▲▲▲ | 中期 | |
再生可能エネルギー 市場拡大 |
◆再生可能エネルギー市場拡大に伴う 計測機器需要の拡大 |
▲ | 長期 | |||
資源効率エネルギー | 生産設備 | ◆工場内の省エネ対策(設備やプロセス)や 資源の再利用により、生産性向上と顧客の 脱炭素化要望に対応 |
▲ | 短期 | ||
製品サービス
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低炭素製品・サービス | ◆LCA 観点による環境負荷の低減により、 市場での製品評価や優位性が向上 ◆顧客の軽量化ニーズを実現捕捉(計測製品 需要拡大) |
▲▲ | 短期 | ||
4℃
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リスク |
物理
(急性) |
激甚化災害の発現 | ◆リスク対策費用(BCP 対応)の増加 ◆被災による物的損害と復旧費用の発生 ◆被災による操業停止(自社・サプライヤー 要因) |
▲▲▲ | 中期 |
機会 | レジリエンス | 災害対応 | ◆災害時における製品・サービスの安定供給 により、顧客生産体制の維持に貢献 |
▲▲ | 中期 |
凡例 財務インパクト:▲▲▲ 大、▲▲ 中、▲ 小 発現時期:短期2022~2024、中期2025~2029、長期2030~
指標・目標
電化やデジタル化の動きが活発になり、半導体需要はますます拡大していくことが予想されます。 脱炭素化社会の実現に向けて、半導体が果たす役割は大きく、当社グループも斯様なニーズに応えていくことが重要であると認識しております。足元の状況を踏まえ生産能力の拡大を企図しており、エネルギー消費の増加が見込まれますが、省エネ努力に加え、再生可能エネルギーをはじめ低炭素エネルギーの利用を促進して、脱炭素化への取り組みを進めます。 当社は2030年のCO2排出量を2018年度比で50%削減します。
温室効果ガス(GHG) 削減
温室効果ガス(GHG) 削減に向けて
東京精密が排出するGHGの殆どは、工場運営に使用される購買電力換算分の二酸化炭素(CO2)が殆どであり、気候変動への影響を最小化するため、省電力に重点を置いた活動に取り組んでおります。
前5か年計画期間 | 新5か年計画期間 | |||||
2018年度 実績 |
2019年度 実績 |
2020年度 実績 |
2021年度 実績 |
2022年度 実績 |
2023年度 計画 |
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排出量(t-CO2) | 12,312 | 11,976 | 9,524 | 8,191 | 8,257 | 10,900 |
電力使用量(Mwh) | 25,765 | 25,448 | 28,843 | 29,835 | 29,546 | 35,580 |
CO2排出量 生産高原単位 (t-CO2/百万円) |
0.160 | 0.191 | 0.129 | 0.080 | 0.074 | ー |
2023年6月16日更新
新工場(飯能工場)稼働によるエネルギー使用量が増え、一時的にCO2排出量が増加します。
今後、当社はTCFD対応プロジェクトを通じ、GHGの中長期削減方針をとりまとめ、開示する予定です。