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vol.01 - 株式会社ナガセインテグレックス
User’s Voice - トップ対談
vol.01 - 株式会社ナガセインテグレックス

1950年、創業者・長瀬登によって旋盤一台の機械加工業としてスタート。幾多もの時代を乗り越え、世界一の超表面・超鏡面加工ができる研削盤、大型の超精密研削盤・門型複合研削盤・ナノマシンの製造メーカーへと発展。日々、世界一の精度・能率を持つマシンづくりを追求し続けています。

モノづくりの未来を切り開いてきた男達が、今を語らう。

株式会社東京精密 代表取締役社長CEO

吉田 均

1983年

明治大学工学部電子通信工学科 卒業

1983年

(株)東京精密 入社

2010年

日本精密測定機器工業会 会長就任

2015年

代表取締役CEO就任(現任)

2016年

NDマーケティング大賞受賞

株式会社ナガセインテグレックス 代表取締役社長

長瀬 幸泰

1979年

明治大学工学部機械工学科 卒業

1979年

長瀬鉄工所(現:㈱ナガセインテグレックス) 入社

1998年

代表取締役社長就任(現任)

2008年

日本小型工作機械工業会 会長就任

2009年

ND マーケティング大賞受賞

入社時の会社の様子

入社時の会社の様子

吉田

長瀬社長が入社された当時の御社はどうでしたか?
私が東京精密へ入社した当時は、本社は三鷹にあり、小さなたたずまいの町工場でした。大学では電子工学を専攻していたので、機械系の会社についてはよくわかりませんでしたが、大学の先生から「今は二部上場だけど、技術力が高くて、これから一部上場に上がりそうな会社だよ」と勧められ、出身の土浦にも拠点があることからUターン就職しました。大学では、ソフトウェアを勉強していたので、入社してすぐに技術に配属され、三次元座標測定機のソフトウェアを担当しました。

長瀬

私が入社した当時は、セーパーや、コンターマシン等の製品のカタログも含めれば、数多くのカタログがありましたが、現在、弊社の主力製品である研削盤のカタログは3 枚しかありませんでした。つまり、3機種しかなかったということです。私は、大学に入学してすぐに病気をして、手術をしました。そこから一年の闘病生活の為、大学を休学しました。そのため、大学時代は東京の下宿先から、近くの病院に通いながら通学していました。
本来なら、卒業後は他の会社で勉強してから父の会社に戻る予定でしたが、病気のことがあり、卒業後すぐに今の会社、当時の長瀬鉄工所に入社しました。残念ながら、大学の勉強をすぐに仕事に役立たせることもできなかったので、入社して初めは経理の見習いをやり、一年程経ち、体の具合も良くなってきたので、営業に配属されました。ルートセールスでしたが、飛び込み営業にも挑戦しました。しかし、電話を掛けても会ってくれる人はおらず、実際に足を運んでも、誰も研削盤をつくっている会社だと知りませんでした。研削盤に関してネームバリューが全くない状況に愕然としました。そこで、"テレビでCMを出しているような会社に使っていただける研削盤メーカーになりたい"と切実に思い、営業の傍ら、企画部を立ち上げました。

企画部での仕事

吉田

それでは、マーケティングに力を入れたのですか?

長瀬

高度成長期は、大量生産の時代です。しかし、オイルショックで様相が一変しました。1970年代の7年間は、『模索期』に入りました。そのときに、工作機械だけでは会社が成り立たないので、海苔剥ぎ器や回転すしのベルトコンベア等を開発していた時代でした。実際に、皿洗い機の営業や、コンベアのPR、お店に設置するための打ち合わせ等もしましたが、"やっぱりうちは工作機械一本でやりたい"と思いました。そのためには、安価な製品を大量生産するのは、これからの日本では厳しい。それでは、海外に拠点を持つかというと、それも良しとしない。よって、製品のコンセプトを絞ろう、と。お客様から受注させていただいてからつくり始める"世界一高精度、高機能"な製品でやっていける会社になりたいと思い、一年発起して製品の開発を180度変えました。すでに先発メーカーがやっていることをいくらやっても認められない。そこで開発陣があちこちの門を叩いて、勉強をしました。そこで出会った一つの技術が『多面拘束非接触油静圧案内技術』でした。しかし、ただその技術を機械に盛り込んでも、認められない。なぜなら、その頃良いと言われていた構造とまったく相容れない技術をおすすめするわけですから。それでも、お客様に提案する部署の人間が実証をやるしかない。お客様にぶち当たりながら、どうすればお客様に理解してもらえるかを考えた結果、テクニカルセンターを立ち上げました。振り返ってみたときに、"これをマーケティングというんだ"という印象でした。

テクニカルセンターと計測センター

テクニカルセンターと計測センター

吉田

弊社も計測センターという施設を持っていますが、テクニカルセンターは、具体的にどのような思いからつくられたのですか?

長瀬

お客様に、こんな機械ができました。すごいでしょ?と言っても、お客様がぴんとこない。でも、言い続けることしかできないので、言い続けていると、とある砥石メーカーさんがうちにいらして、「2000番とか3000番という非常にハイメッシュなホイールをつくったのはいいけど、使える機械がない。聞いたところによると、御社の機械は0.1μの分解能で切り込みが落とせるらしいね。この砥石で物を削ってみてくれ」と言われました。そこで、削ってみると、鏡みたいになってしまった。様々なワークも全て鏡みたいになってしまう。これって、手で磨く必要がないのでは?と気づきました。そして、実際にお客様に削ったワークを持っていくと、「これ手で磨いたんだろう」「テストだからだろう」と信じてもらえませんでした。そこで、ワークをいただければいくらでも削ります、とお伝えして、実証・テスト加工の場が必要だと感じて、テクニカルセンターをつくりました。

吉田

弊社の計測センターは、マシンをただ並べるだけじゃなくて、お客様のニーズを聞き出しながら、きっちりと測定提案できる、テクニカル的にサポートができる体制をつくりたい、という思いで進めました。ニーズが聞けるというのは、マーケティングの一つでもあります。お客様が"今、何を求めているか"ワークを持ってくるお客様は何か課題を抱えている。それをキャッチして、次の開発につなげる。また、アプリケーションスタッフもノウハウを持っていないと、お客様に提案できません。そこで、ただのショールーム、アプリだけではない、計測センターをつくりました。

長瀬

このような場は"情報の交差点"だと思います。私にとって、非常に重要な場所です。私の場合、当初は自分で削って持って行っていました。弊社は、当時ヨーロッパで世界で一番と言われている平面研削盤メーカーとは、相容れない構造の製品を作っていました。それなのに、世界一のメーカーより厳しい条件を突きつけられ、精度を出さなければならないので、製造の人は怒っていました。そこで「誰かやって」と頼んでもやってもらえず、テクニカルセンターに常に人を配置することもできなかったので、言い出しっぺの自分がやりました。(笑)今振り返ると、当時の経営者(創業者)がそれを許してくれたことがすごいと思います。ビス1個無駄にすることには厳しかったのに、開発業務は無駄と言わずに、「おまはんらはすごいな、そんなもの開発したんか」と感動してくれたことに感謝しています。

世界一を目指して

世界一を目指して
【超精密成形平面研削盤_ SGC - 630 α】

吉田

御社は、「超精密平面研削盤」のイメージがありますが何か技術に対するこだわりはありますか?私がグループリーダをやっていたときは、No.1にこだわり、今の粗さ計より10倍速くしろと言いました。10倍を目標にすると、今の技術じゃ無理です。そこで今までの送りねじ方式から、リニアモーターに変更しました。結果的に、10倍速くはできませんでしたが、3倍速く振動も数分の1 になり、特許も取得しました。10倍のコンセプトを実現する為には、競合が追い付けないよう全く別の発想で考える必要があります。それで特許を取得すれば、"決定的な差別化が出来る"と私がリーダーのときには考えていました。このような技術革新が今につながっていると思います。少しの差別化で満足していては、世界一にはなれません。"世界一を目指す為には、決定的な差をつけることが大切"だと思います。

長瀬

私にとって、「原理・原則・基本に忠実に」というのは絶対にはずせないです。最近は、もっともらしく話す人が増えてきて。真理を検証するというよりも、温度や振動なんかを言っておけば、納得してしまう雰囲気がありますが、達成するためには、原理・原則からはずれない。NAGASEマン全員で共有するように努めております。

吉田

"精度は積み重ねでしかなし得ない"ですよね。一個ずつ理詰めで積み重ねていかなければ実現できない。一瞬はできたとしても、下から順に積み上げないといけない気がします。細いものを立てたとしても、すぐ倒れてしまう。それと一緒だと思います。素材から考えて作っていかないと、いい製品はできないですよね。

長瀬

原理・原則がいかに大事かをあちこちで身に染みています。以前、海外メーカーで真円度測定機の購入を検討した際に、担当の営業の方に、ところで真円度とは根本となる原理があるのですか、と尋ねると、イギリス王室の研究所の中にあると言われました。それでは、その精度は何で測っているのですか、と尋ねると、当社の測定機だと言われました。その答えだけでは納得がいかず、なにをもって、本当の真円度と証明するのですか、と尋ねると、その担当の方はムッとして、「とにかくうちの真円度測定機を持っていない工作機械メーカーなんてろくでもない」と言われ、購入をやめました。その後、真直度を計る為に三点法と反転法という方法で、マスターの精度を測るなど、その原理を使っていかに真ん丸かを測ることができると知り、あのとき、こう説明してくれれば買っていたかもしれなかったのに、と思いました。それほど、技術を使ってモノをつくっている会社にとって、原理・原則は大事だいうことは共通の概念だと思います。

吉田

弊社も、そのあたりはしっかりしています。真円度測定機の回転テーブル自体にも誤差がありますので、それを除かないと正しい計測はできません。位相をずらして測定した全データを重ねて差分を取り除くとテーブル自体の素性がでてきます。それをコンピューターで計算すると真円度が出てきます。私は、ソフトウェア開発を行っていたので、データ処理は随分やりましたよ。

工作機械の未来

工作機械の未来

吉田

最近は、IoTやAIなどが注目されていますが、長瀬社長はそれらについてどうお考えですか?

長瀬

インダストリー4.0から特に注目されている印象ですが、IoTに関しては潜在的には昔からある発想だと思っています。出張先からマシニングの稼働状況が見れたり、お客様に納品したマシンが稼働しているかデータを遠隔地から収集するなど、随分前から行っている会社はあります。また、AIを含め、自動化・省人化の要望は止められないと思います。それは我々にとって自己矛盾の中にあると思っております。「今よりスピードが3倍の速度になります」「今まで3台必要だったマシンが1台で済むようになります」というのは、機械をつくらないでいいようにしているのと同じことですよね。工作機械を必要としている市場が拡大しているうちはいいですが、成熟していくとどんどん機械をつくらなくていいように、人が関わらないようになっていく。ある意味自己矛盾の中にありますよね。でも、この流れは止められない。当然対応しなければいけないと思います。

吉田

私は、IoTは、測定機にとって、チャンスだと思っています。今までは単に「OK、NGの判断をするもの」「生産には必要がない」「工程管理でいい」という考えだったのが、IoTやインダストリー4.0等から生産全体を管理する時代になっていくと、どう効率を上げていくか、どう精度を高めていくかというときに、測定機が生産ラインの中に入ってきて、生産財の一つになってくる。測定機抜きでモノがつくれないとなると、より一層ニーズが高まっていく。測定機のかたちを流れに合わせて変えていけたら、ニーズが高まっていくのかな、と考えています。

長瀬

将来、時代に合った製品を共同開発できたら良いですね。

吉田

ぜひ、協力していきたいですね。

株式会社ナガセインテグレックス

1950年、創業者・長瀬登によって旋盤一台の機械加工業としてスタート。幾多もの時代を乗り越え、世界一の超表面・超鏡面加工ができる研削盤、大型の超精密研削盤・門型複合研削盤・ナノマシンの製造メーカーへと発展。日々、世界一の精度・能率を持つマシンづくりを追求し続けている。

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