すべては、映画の1シーンから始まった。

寺川 康太

半導体社 開発部
テクノロジディベロップメントグループ
新領域創成科学研究科 物質系専攻 修了
2011年入社

精密。それは、ロマンだ。

故障した宇宙船を地球に導くため、現在位置の測定を手計算で正確に行う。「すごい……!」。映画『アポロ13』の1シーンに、少年は心を奪われた……。寺川が己の進む道を決めたのは、胸を焦がすような、強いあこがれだった。物理を専攻し、光を使って物質の評価を行う研究に没頭した。自らのアイデアや技術で、ものを精密に測る。それは、夢にまで見た理想の自分であったかもしれない。そのまま研究者として生きていくことも考えた。しかし、次第に彼の中にとある思いが芽生えていったのだという。
「私が関わっていた研究は、きわめて特殊な環境下でしか精密な評価ができない。それよりも、どんなに厳しい環境下でも再現性のある精密な評価ができるほうが、世の中に貢献できるのではないか。そう考えて、企業への就職を決めました」
会社選びの軸はいたってシンプル。どんな環境でも精密な評価ができる機械をつくっているところ。MRIなどの医療機器や温度計など、さまざまな機器をつくっている会社を回ったが、ピンとはこなかった。東京精密を選んだのは、条件を満たしていたこと。そして、機械の一部分ではなく、すべてを任されるやりがいに魅力を感じたからだ。
「自分のアイデアを活かして、『ものづくりの現場』という厳しい環境下で、ナノメートル単位の精密さを持つ装置をつくる。これほど魅力的な環境はありませんでした」
あの日見た、映画の1シーンを自らの手で。それは、技術者だけが持つ、純粋なロマンなのかもしれない。

その答えを導くのは、自分しかいない。

寺川は、装置の動きを制御するソフトウェアエンジニア。担当するのは、半導体の検査工程で使用されるウェーハプロービングマシンだ。この装置は触針を半導体にコンタクトさせ、仕様通りに電気的特性が機能することを確かめるのだが、その肝となるのが、針が触れる場所を探る「位置決め」の技術。それを画像処理によって制御するのが、寺川の仕事だ。
「数ミクロン単位の精密さで、触針をウェーハに当てる。その難しさは言葉では説明できないほど。さらに、触針の形状や半導体ウェーハの種類によって、その方法は異なります。短い開発期間で、次々とロジックを考え、アルゴリズムに落としていく……。お客さまはより精密なものを求めていますので、常に新たなチャレンジをし続けている感じですね」
入社して1年間で、寺川が手がけた仕事はさまざまあるが、そんな中で、彼が忘れられないのが、顧客の要望で、より精密に評価するための新機能開発に携わったことだ。
「今使っている装置の使い勝手や機能を守った上で、精度を上げてほしいという要望でした。これまでの使い方を無視すれば、実現することは容易でしたが、制約があることで、開発が困難なものになったんです。何度も壁にぶつかりましたが、先輩方のアドバイスをもらいながら、自ら考え、お客さまが求める精度を出せたことは、大きな自信になりました」
そう話す寺川は、無意識に笑顔になっていた。辛くはなかったのかと尋ねると、彼は即答する。
「それが、この仕事でいちばん楽しいところなんですよ」

ゼロからつくる。

自らのアイデアで、既存の機種をより高精度にカスタマイズしてきた寺川は、昨年秋から新製品の開発に携わることになった。今まで以上にやりがいのある仕事に、発見の日々を過ごしているという。
「ゼロからつくる。それが、私にとって何よりのモチベーションになっています。新しいことに取り組むことは、技術者として何よりの喜び。これまでお客さまが望んでも実現できなかったことを叶え、長く愛される製品をつくりたいんです」
常に新しいものを求めて、己を磨き、人々に価値を届けていく。少年時代のあこがれを堅実な努力で、現実にしてきた技術者は、自分だけの夢を見つけ、邁進し続けている。
「東京精密のウェーハプロービングマシンは、世界トップシェアを誇る、素晴らしい製品です。ここに自分の技術やアイデアを活かせることが、何よりのやりがいになっています。世界中のものづくりを支える精密な装置を実現し、社会に確かな価値を届けていきたいですね」

休日の過ごし方

少年時代にサッカーをしていたこともあり、フットサルを楽しんでいます。頭を使う仕事なので、体を動かしてリフレッシュすることは大事。健全な精神は、健全な肉体に宿るものですから。また、いつかは海外で活躍したいと思っているので、英語の勉強も始めました。堅実に努力すれば道は拓ける。私はそう信じています。