製品開発の原則とMOTTOの制定(1995~2000)

WIN-WINで世界No.1へ

1997年8月、グループリーダー報告会において、大坪社長より「製品開発の原則」が明確に提示されました。以後、当社の技術開発はこの原則に則って進められています。

製品開発の原則

  1. 世界No.1の製品を創る
    マーケットシェアNo.1の商品は
    (a)好況時の利益の極大化がはかれる(MINI MAX)
    (b)不況時の損失の極小化がはかれる(MAX MIN)
  2. 研究開発投資は自己資金で(MAX MIN)
  3. 開発は技術参入障壁が高く、マーケットが大きくニーズも高い分野を狙う(MINI MAX)
  4. 相応しいパートナーを見つけ、開発コストをシェアするとともに開発の成果を共有する(MAX MIN & MINI MAX)

1998年にはこの「製品開発の原則」を貫徹するために社是を見直し、新しい行動指針である「MOTTO」が制定されました。この「MOTTO」では、世界No.1の製品を創るためには、その目的を共有できる会社および個人とパートナーシップを組むことが必要であることを謳っています。そして、手を組む以上、双方にとってメリットのある「WIN-WIN」の形態が最高であるということを意図しています。当社は新しい行動指針のキーワード“WIN-WIN RELATIONSHIPS(ウイン・ウインの仕事)”を常に意識しながら、継続的に世界No.1の製品開発をめざすことになったのです。

MOTTO

“WIN-WIN RELATIONSHIPS CREATE THE WORLD'S No.1 PRODUCTS.”
(WIN-WINの仕事で世界No.1の商品を創ろう)

将来を見据えた事業の再構築

1995年度以降は売上高が、過去最高を毎年更新。半導体不況の影響で1998年度にはその伸びが止まったかに見えましたが、翌1999年度には再び過去最高業績を更新すると、その翌年の2000年度は、空前のITブームにより、当社の業績も売上・利益ともに前年度を大きく上回り、売上高732億円、営業利益150億円と過去最高業績を大幅に更新しました。このことが磐石な財務基盤の確立につながりました。

当社は成長戦略の手綱を緩めることなく、更なる飛躍をめざして「製品開発の原則」に則り、ウェーハ外観検査装置やCMP(Chemical Mechanical Planarizer)装置そして、ポリッシュ・グラインダの開発に着手しました。これらは成長市場であり、次世代マシンへのお客様のニーズが強いこと、また当社の得意とする計測技術を応用できることなどから重点投資の対象ととらえ、多額の研究開発費が投入されました。その一例として、当時、センサー用基盤の組み立てを担当していたマイクロ・テクノロジを増資・組織変更して、(株)ティーエスケイ・マイクロテクノロジ(現アクレーテク・マイクロテクノロジ)を設立、ウェーハ外観検査装置の開発・生産・販売サポート業務を移管しました。ティーエスケイ・マイクロテクノロジは当社の中期展望を達成するための戦略子会社と位置づけられ、年俸制を採用して、世界中から優秀な技術者を集め、世界No.1の製品開発をすることを目標としました。

その一方で、今後市場規模の拡大が見込めない分野については、子会社への生産移管、他社との提携、競合先とのアライアンスなどを積極的に活用することによって、R&Dコスト、生産コスト、販売コストなどをシェアする方法で事業の再構築を図りました。

1995年には、後に計測機器分野のみならず半導体製造装置分野でも強力な提携先となるドイツのCarl-Zeiss-Stiftungとの提携が実現しました。当時、企業同士の提携では互いに弱い点を補完しあう形式が一般的だったため、当社が三次元座標測定機の競合メーカーであるCarl Zeiss社と提携したことは、業界でも注目されました。提携の内容は双方の強みを生かした合理的なものであり、これにより当社は表面粗さ・輪郭形状測定機と真円度・円筒形状測定機を、Carl Zeiss社が三次元座標測定機をそれぞれ開発製造し、お互いに供給することとし、開発製品の合理化を図りました。また販売についても、それぞれの強みを活かし当社が日本、Carl Zeiss社が欧米・東南アジアを担当し、それぞれの知名度を活かして製品を販売するという戦略で、売上拡大に多大なメリットをもたらしました。

この提携は、「WIN-WINの仕事で世界No.1の商品を創ろう」という当社の「MOTTO」の原型ともいえる代表的なモデルとなりました。

「製品開発の原則」の具現化

この「WIN-WIN」の理念を標榜するものとして、その名が付けられた新製品が2000年に市場投入されました。当社が重点投資の対象として多額の研究開発費を投入していたウェーハ外観検査装置「WIN-WIN 50」です。

ウェーハ外観検査装置は、半導体の製造工程でウェーハ上の回路パターンを調べて欠陥、異物等を検出し、歩留まりを向上することを目的とした装置です。当社が提携しているCarl Zeiss社と共同で開発した共焦点顕微鏡を搭載し、子会社「Tokyo Seimitsu (Israel) Ltd(. 現Accretech Israel)(」1996年設立)と共同開発した画像処理システムやソフトウェアなどの最先端の技術を駆使した、まさに世界の英知を集めて開発した製品でした。1999年には八王子工場内にクラス10という極めてクリーン度の高いクリーンルームを設備した専用工場「WIN-WIN棟」を建設するなど、全社をあげてこの製造をバックアップしました。

2000年はこのほかにも当社が世界No.1シェアをめざした代表的な製品が次々に発表されました。

CMP装置「A-FP-210」

当社の新規参入製品群の一つが、ウェーハ外観検査装置と並んで重点製品に指定されたCMP装置です。ウェーハの大口径化とともに多層配線が進み、層の数が増えるほどウェーハ上の凹凸が問題になり、ウェーハを研磨して平坦にする必要性が生じていました。マーケットが大きいため参入メーカーも多かったこの分野で、当社は精密計測機器メーカーとして培ったエア制御技術を応用して開発したエアフロート式ポリッシングヘッドと、次世代カッパープロセスにも対応したリアルタイム終点検出機能などを搭載し、優れた均一性と安定した研磨結果を実現、製品化しました。

ポリッシュ・グラインダ「PG200」

ウェーハを任意の厚さに加工する工程で要求されるウェーハの薄片化とダメージの除去を実現したポリッシュ・グラインダは、ウェーハをチャックテーブルに保持したまま全工程(粗研削工程~仕上げ研削工程~ポリッシング洗浄工程)を行えるまったく新しい構造をもったグラインダです。当社独自の発想から生まれたポリッシュ・グラインダは、各種ICカード、システム・パッケージ(SiP)や三次元実装技術に要求されるウェーハの薄片化に対応し、現在、デファクト・スタンダードとして市場で高く評価されています。

WIN-WINの関係から生まれた新技術

1990年代後半、市場の成熟化にともない、当社は半導体事業においては前工程とテスト工程の装置に経営資源を集中するという経営戦略をとり、1999年にはスライシングマシン、ワイヤソーをはじめとするウェーハ製造装置の製造、開発、サービス業務を子会社の(株)東精エンジニアリングに移管しました。さらにその後、スイスに本社があるHCT Shaping Systems SA(以下、HCT社)と提携し、HCT社製のワイヤソーおよびその関連装置の販売・サービス業務を手がけることになったため、子会社でのワイヤソー生産を中止、HCT社製品に一本化しました。

「製品開発の原則」に基づいた当社の判断は、たとえ自社で開発した製品であっても、常に世界の市場動向やコストとの兼ね合いを冷静に見極めるという厳しさを持っていますが、この方針を貫くことこそが今日の当社の発展を支えています。

2000年、半導体製造プロセスにおける最も重要な技術課題といわれるリソグラフィ技術の開発と事業化を目的に、米国のNanolith, L.L.C.,及びエンジェルラボ(株)との共同出資により、開発ベンチャー(株)リープルを設立しました。その後、リープル社とともに業界各社に呼びかけて次世代リソグラフィ技術の開発促進ならびに普及を目的に「LEEPL技術コンソーシアム」を発足させ、関連技術の開発に努めました。2005年1月にはリープル社の「半導体製造用低加速電子ビーム近接転写装置」が機械振興協会の「新機械振興賞」を受賞、日本初の独自技術が半導体産業の未来を開きつつあることを、国内外に示しました。

2002年、世界で初めてステルスダイシング技術を開発した浜松ホトニクスと業務提携を結びました。そして同年の12月に、浜松ホトニクスが開発した技術と、東京精密の精密計測技術と幅広い半導体製造装置技術を融合させたレーザーダイシングマシン「MAHOHDICING MACHINE」を市場に発表し、翌年より販売を開始しました。

これらは、「WIN-WINの関係」で他社の技術を柔軟に受け入れ、新たな技術を生み出していく土壌があるからこそ誕生した製品であるといえます。

その一方で、2002年には自動計測機器部門を子会社である東精エンジニアリングに営業譲渡しました。自動計測機器部門を東精エンジニアリングに集中させることで製品戦略を含め、きめ細かな事業展開を進め、中国の機械加工分野における自動計測機器の需要に対応できる体制をとることが出来ました。

リソグラフィシステム「LEEPL-3000」

デザインルールの微細化にともない、光源を短波長化することで進化してきたリソグラフィ技術にあって、リープル社が開発した「LEEPL」は、その原理のシンプルさと装置構成の容易さを背景に、驚くべきスピードで実用化が進みました。量産第一号として2003年に開発された電子ビームリソグラフィシステム「LEEPL-3000」は、LEEPLの基本概念の具体化と周辺インフラ技術の確立が相互に作用して実用化の道を開いたものです。

レーザーダイシングマシン「MAHOHDICING MACHINE」

(株)浜松ホトニクスとの業務提携による共同開発からは、2002年に新型レーザーダイシングマシン「MAHOHDICING MACHINE」が誕生しました。これはシリコンウェーハを表面に損傷を与えずに非接触で切断することができる世界初のマシンで、洗浄を必要としない完全ドライプロセスなどが特長の装置です。

計測機器分野におけるさらなる進化

精密加工製造ラインがフルオートメーション化、24時間稼動を実現していくなかで、安定した品質を保つための計測機器の重要性はますます高まり、測定の精度、速度、測定機の使いやすさに対するニーズは高まる一方でした。工作機械メーカーや製造現場からの「こういう計測機器があったら」というさまざまなニーズに的確に対応することは、これまでに培った技術力と特許取得などの実績、要望に応えようとする開発担当者の意欲的な取り組みによって、支えられています。

「コンターレコード1600C/2600C」

当社は、「サーフコム550A」の発表以来、コンピュータの存在を意識させないコンピュータ内蔵型の表面粗さ測定機を開発してきましたが、1994年にはパーソナルコンピュータを導入して形状データの測定から解析、印刷までを簡単・スピーディに行える「コンターレコード1600C/2600C」を発表しました。その後は、スムーズな操作性の液晶タッチパネル、初心者のためのガイダンス機能、必要なアイコンだけを表示するカスタマイズ機能などを装備した現場向け小型高性能化がすすみ、1998年には世界最高レベルの分解能をもった表面粗さ・輪郭形状統合測定機「サーフコム3000A」へと進化しています。

CNC真円度・円筒形状測定機「ロンコム60A」

真円度測定機についても、大型化・高精度化のニーズが進み、それに対応して世界最高水準機が誕生しています。1998年に開発された全自動CNC真円度・円筒形状測定機「ロンコム60A」は、テーブル回転型ではクラス最上位に位置づけられる驚異的な高精度と、従来機に比べて約50%向上した高いスループットを実現しました。これは自動車・電機部品の円筒解析に最適との評価を受けています。

三次元座標測定機「ザイザックスVF」シリーズ

従来の三次元座標測定機は、オペレーターによって測定前に各種設定を行う必要があり、長期のトレーニングを要しました。当社は、“誰にでも簡単に操作できる測定機を”というニーズに応え、1993年に人口知能(AI)機能を搭載した三次元座標測定機「ザイザックスVF」シリーズを発表しました。このAIソフト技術は提携先のCarl Zeiss社にも供与され、世界最高水準機能の同社の高級機種にも搭載されました。これにより当社が開発した普及機である「ザイザックスVF」シリーズとあわせて、製品ラインナップが強化され、さまざまなお客様のニーズに対応することができるようになりました。

海外のお客様との接点を重視した海外拠点の整備

1990年代半ばからは、欧米やアジアなどの海外マーケットの開拓やサポートサービスの充実のため、海外拠点の拡充も積極的に推進しました。従来の米現地法人4社を統合した「Accretech USA」は現在米国本土に7拠点、1989年に設立した「Accretech (Europe)」は現在欧州4ヵ国に拠点を有しています。

世界が注目する巨大市場中国には1994年に北京、1996年に上海に拠点を設け、1995年には中国の精密測定機器トップメーカーと合弁会社「三門峡中原精密有限責任公司」、2002年には現地法人「東精精密設備(上海)有限公司」を設立して、プレゼンスの強化を図っています。ASEAN諸国では 1994年に「Tokyo Seimitsu Malaysia(現Accretech Malaysia)」、1997年に「Tokyo SeimitsuSingapore(現Accretech Singapore)」を設立しました。このほか、韓国、台湾にもサービスセンターを開設しました。

好況による増産や新製品開発のため、生産設備も積極的に増強しました。1994年には八王子工場と土浦工場で、品質システムの国際規格「ISO9001」の認証を一括取得、1998年にはこの2工場一括で環境マネジメントシステムの「ISO14001」の認証を取得するなど、日常の生産活動の効率化や環境負荷の低減に取り組んでいます。